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5.4.将来に向けた研究

本SRでは、CFDを柱とした「流場解析的船型計画法」を将来にわたって推進するために、これまで説明した実用化研究だけでなく、今後有望と思われる要素技術を開発する高度化研究を行った。

 

5.4.1高次乱流モデル
将来、CFDの適用が副部等がついた複雑形状船型へと拡大することを考慮し、本SRで用いたゼロ方程式系乱流モデルに留まらず、より高次な乱流モデルについて検討した。
Spalart−Allmarasモデル(以下、SAモデル)は、過勤粘性係数Vtに関する輸送方程式を解く1方程式モデルであり、ゼロ方程式モデルでは困難な、剥離等を伴う流れの計算にも適用することができる。図5.4.1.1にSR196A船型のVt分布と伴流分布を示す。BLモデルが不連続的なVt分布をしているのに対して、SAモデルは、流場の輸送方程式に類似の輸送方程式に基づいているため、滑らかで自然な分布形状を有している。伴流分布に大きな改善は見られないが、BLモデルと同様な改良を行うことによって、性能向上が期待される。
乱動エネルギーκとその散逸率εの2つの量に関する輸送方程式を解く2方程式モデルであるκ-εモデルは、工学において最もよく用いられる乱流モデルであり、本SRにおいても、壁近傍ではκの方程式だけを解く2層式κ-εモデルの検討を行った。

 

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図5.4.1.1 Spalart-AllmarasモデルとBaldwin−Lomaxモデルの比較

SR196A船型、プロペラ面

 

5.4.2格子生成法
CFDの実用問題への適用野ボトルネックの一つである複雑形状問題の解決を目指して、局所格子細密化法と非構造格子法を検討した。
局所格子細密化(Local Grid Refinement)法は、格子密度を局所的に高めることによって、計算時間の僅かな増加だけで計算精度を大幅に向上させることができる。図5.4.2.1に船尾縦渦の形成に寄与する肥大船船尾ビルジ部の細密化を示す。
非構造格子(untructured grid)法は、2次元では3角形、3次元では4面体を要素とした格子であり、形状自由度が非常に高い。図5.4.2.2にフラップ付き2次元翼型まわりの非構造格子を示す。なお、非構造格子法に用いる乱流モデルは、幾何学的拘束条件の少ない1方程式やモデルや2方程式モデルが適当である。

 

 

 

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